【私的大河ドラマ論「鎌倉殿の13人」によせて】
2022年09月06日
ドラマもいよいよ後半に差し掛かり、A・クリスティの「そして誰もいなくなった」ばりのサスペンスドラマへと急展開を始めました。
一人、また一人と、13人衆が姿を消していく様は、その背後に蠢く策謀と、闇の深さを浮き彫りにしています。
思えば本年の大河は、鎌倉幕府の創設者「源頼朝(ドラマ前半に退場)」とその妻「北条政子」を除けば、広く知られる人物は皆無と言ってよく、過去の大河でも“ほぼ”取り上げられることのなかった未踏のジャンルです。
平たく言えば、鎌倉時代の前半、史上有名とは言えない武士たちが、それぞれの一族の利害と欲望のまま、血で血を洗う生臭い闘争を繰り返した時代、といったところでしょうか。
それが俊英なる脚本家の手にかかると、文句なく面白い展開となりました。
この時代に、殆ど予備知識を持ち合わせていなかったことが幸いし、毎回この先の展開が判らないことから、番組を熱視しています。
所々に盛り込まれたウェットなコントが、この裏切りと粛清のドラマの絶妙な箸休めとなり、飽きることない群像劇を紡いでくれています。
果たして義時(本年主人公)は、粛清という浄化のその先に、“浄土”鎌倉を見ることができるのか、毎週が楽しみでなりません。